東日本高速道路の調査で、高齢になるほど自動車の運転に自信を持っていることがわかりました。
75歳以上で自信を示した人は8割を超え、高速道路での逆走も「自分には関係ない」とする高齢者が4割を超えたそう。
また、親に「運転が危ない」と伝えた人は8割に登りますが、子どもから指摘されたとする高齢者は24%にとどまる、という結果に。
この調査では高齢者の危機意識の乏しさが浮き彫りとなった形。
高齢運転者について考えていきます。
高齢者は「被害者」ではなく「加害者」?高齢者ドライバーの特徴とは?自信はあるけれど…

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最近の運転免許更新の場では、「高齢者と自動車運転」というテーマの安全講習もあるそう。
若いうちから、ある程度の年齢で免許を返納させよう、という思いを持たせる講習です。
現在、70歳以上の高齢者は運転免許を更新する際、「高齢者講習」を受けることが義務。
また、75歳以上は「認知機能検査」も受け、いずれも問題ない、と判断されないと運転免許を更新できません。
さらに2017(平成29)年3月に改正された道交法では、75歳以上の運転者が一定の違反行為をした場合、免許の更新時でなくとも臨時の認知検査を受けるよう義務付けられています。
過去記事
【運転免許】70歳以上の義務!『高齢者講習』の検査では何を見る?免許返納の必要性
https://slownet.ne.jp/c/society/post-25928/高齢者の運転による交通事故を減らす「高齢ドライバー」についての知識
https://slownet.ne.jp/c/society/post-19757/
ここまでくると、高齢者に運転免許を持たせてなるものか!という思いまで感じてしまいますよね。
なかにはこうした厳しい審査を受けるなかで、「思ったよりも衰えている」「事故を起こしやすくなっている」と気が付き、運転免許を更新しない人もいるえしょう。
難しい講習は、こうした気づきを与えてくれる場でもあるのです。
警察庁が発表している「平成30年における交通死亡事故の特徴等について」には交通事故にまつわるデータが書かれています。
平成30年の交通事故死者数は3,532人と減少傾向で、人口10万人あたりの死者数も同様に減少しています。
その一方で、高齢者人口10万人あたりの死者数は全年層の約2倍に相当し、相当数の高齢者が交通事故で亡くなっている、ということがわかります。
交通事故による死者のうち、半数が歩行中または自転車乗車中。
そのうち7割が高齢者で、うち3分の2には法令違反があったそう。
高齢者はデータ上で事故率が高いといえることがわかります。
家族が高齢者に運転をやめさせる、免許を返納させるのは容易ではない

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65歳以上の高齢ドライバーやその子ども416人を対象にインターネット上でアンケート調査を東日本高速道路が行いました。
その結果、高齢ドライバーのうち、運転に「とても自信を持っている」「自信を持っている」と答えたのは76%で、内訳は男性81%、女性50%に。
年代別で見てみると、66歳から69歳では自身がある人は74%だったのに対し、70歳から74歳では75%、75歳以上では79%となり、高齢になればなるほど雲煙に自信をもつ割合が高くなっています。
免許を返納しても良い年齢を訪ねたところ、平均は79歳。
65歳から69歳では77歳、70歳から79歳では80歳、80歳以上は83歳と回答するなど、年齢を重ねるごとに返納を考える年齢が上がっている、という特徴があります。
また、近年問題となっている高速道路の逆走による事故の7割は高齢者。
高齢ドライバーに逆走について尋ねると、「自分は逆走を起こさないと思うので関係ない」「興味なし」と回答したのは41%。
「自分も運転するので関係ある」と回答した人は59%となり、他人事ととらえている高齢者は多いようです。
このアンケート調査では、高齢ドライバーを親に持つ子どもにもいろいろと尋ねています。
親に「運転が危ない」と伝えた子どもは80%に達したのに対し、子どもから運転が危ないことを伝えられた高齢者はわずか24%。
ここにかなり乖離があることがわかりまうs。
子どもが注意を促しても、親自身に自覚がないため、聞いても忘れている、聞き流している可能性もありそうです。
「危ないから運転させない」というのは、ニュースなどで高齢者の事故情報が出るたびに思うこと。
「家族が運転免許を取り上げればいいじゃないか」と簡単に思ってしまいますが、実際にはそう簡単なものではないそう。
「運転免許を取り上げるとボケてしまうのではないか?」「あなたはもう運転もできない老人という事実を突きつけられない」といった理由で、免許を返納させるのは容易ではないようです。
事故を心配する日々はもういやだ!警察の相談窓口利用を

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東京新聞は昨年1月29日付けの社説で「悲劇の後では遅い。本人の自覚が大切なのはもちろんだが、周りが運転免許証の自主返納を後押ししたい」と述べています。
また、東京新聞は内閣府の世論調査を取り上げ、「70歳以上の運転免許保有者が免許を返そうと思うきっかけは、複数回答で自らの身体能力が低下したと感じたときが74.3%と最多となった」と書いています。
さらに、「反面、家族や友人、医者らから勧められたときが26.3%、交通違反や交通事故を起こしたときが10.9%、返納するつもりがないが9.2%」だったと続けます。
これらを引き合いに出し、東京新聞の社説では「運転に対する自身とこだわりの強さが浮かぶ」と指摘。
最後に読者の体験談を挙げています。
東京新聞に掲載された読者の体験談
父は認知症が進み、医師からも運転を止められたが、聞き入れない。家族全員で警察の相談窓口に行き、認知症などの検査をした。父は認知力の低下を実感したことで、免許を手放すと言ってくれた。粘り強く説得してくれた警察官の協力があってこそだった
現在警察では、カレイによる身体能力の衰えで運転に不安を感じている高齢者などに、運転免許証の自主返納を勧めています。
その甲斐あってか、今年4月に発表された運転免許証を自主返納した75歳以上の人は、去年1年間で29万人あまりと、過去最多となりました。
前年と比較すると、3万8,152人上回り、運転免許証の自主返納がはじまった平成10年以降でもっとも多くなりました。
警察庁では、高齢者本人だけでなく、その家族からの相談にも応じ、身体能力に合わせた運転や運転免許の自主返納つなげるための相談ダイヤルを今年秋から設置予定。
なかなか免許を返納しない高齢ドライバー対策に本腰を入れる形です。
その一方で、すべての高齢者が都市部に暮らしているわけではありません。
交通インフラが整っている都市部であれば、運転免許証を返納しても、公共交通機関で移動などができるでしょう。
しかし、バスは1時間に1本あればいいほう、駅は車で1時間という場所に住んでいる人は車がなければ何もできません。
運転免許の返納を促すとともに、交通インフラが弱い地域に住んでいる人へのフォローを進めるべきだといえるでしょう。
車は生活の足としてとても便利です。
しかし、アクセルを踏めば暴走する危険性もはらんでいます。
便利な半面、「殺人マシン」になる危険性もあるのです。
だからこそ、自分の身体能力を過信せず、家族からの言葉にはしっかりと耳を傾けるのが良さそうですね。