昭和のレトロなたたずまいを残す「横丁」が注目を集めています。細い道沿いには居酒屋やバー、小料理店など、個性豊かな店が軒を連ねています。探検気分で、ぶらりと歩いてみませんか。
横丁ブーム来たる!
▶ルーツの多くが露天の市場
「横丁」とは、表通りから横へ入った町筋のこと。都市部の駅周辺の一画を占める飲食店街が、「のんべい横丁」などと名付けられていることが多く、東京都内を中心に各地に横丁が存在しています。
その歴史をたどってみると、太平洋戦争後に駅前に自然発生的に生まれた露天の市場が起源である場合が少なくありません。時を経て、飲食店街へと発展し、横丁として定着したのです。

▶再評価される魅力
近年、駅前再開発の影響で整備が進み、横丁は減少傾向にありますが、一方で女性や若い世代の人気を集める横丁も現れています。テレビや雑誌に頻繁に取り上げられ、「横丁ブーム」と言われることも。
ブームを受けて、横丁のイメージも大きく変わりつつあります。古くからの老舗に加え、女性客が入りやすいバーやビストロが続々とオープンしています。曲がりくねった通りの先にどんな店との出合いがあるのか、冒険心を味わうことができるのです。
また、こぢんまりとした空間は人と人との距離が近く、自然と店のスタッフや客同士のコミュニケーションが生まれます。そんな庶民的な雰囲気と、昭和の面影を残すたたずまいが、現代の横丁の大きな魅力と言えそうです。
昭和な飲み屋横丁巡り
▶ 横丁ブームの火付け役 (東京都武蔵野市)
吉祥寺のランドマークになりつつある「吉祥寺ハーモニカ横丁」。通称「吉祥寺ハモニカ横丁」とも。JR吉祥寺駅前に、新旧合わせて100軒ほどの店が並んでいます。その様子をハーモニカの吹き口に例えたというのが名前の由来。
1998年、モダンな飲食店がオープンし話題を集めたことがきっかけ。さまざまな業種が混在していて、横丁巡りの楽しさが味わえます。

▶戦後の雰囲気を色濃く残す 新宿西口思い出横丁(東京都新宿区)
戦後、もっとも早く露天の市場ができた街と言われる新宿。1947年ごろには牛や豚のもつの串焼きや煮込みを売る店が増えて繁盛したとか。現在もやきとり店やもつ焼き店が多いのはその名残です。店舗間の壁を戸板1枚で区切った造りも当時のまま。高度経済成長期には300軒ほどあった店舗も80軒ほどに減りましたが、そこかしこに染みついた昭和の思い出を懐かしみながら、杯を傾ける酔客で賑わっています。

▶ 串かつ店を目当てに大行列 (大阪府大阪市)
大阪のシンボルタワー・通天閣のお膝元の新世界へと通じる道。1921年に開通しました。横幅の狭い通り沿いには、居酒屋や射的の店が立ち並び、呼び込みをする三味線の音「ジャンジャン」が名称の由来になっています。
林芙美子の絶筆となった小説「めし」にも描かれたことから、知られるように。今では、大阪名物として人気の串かつ店に観光客が列をなして賑わっています。

暮らしに根ざした横丁巡り
▶ 手作りのおかずにほっこり 鳥越おかず横丁(東京都台東区)
東京・下町の商店街「東京都台東区鳥越本通商盛会」のこと。230メートルにわたって、総菜店が並んでいます。「おかず横丁」と呼ばれるようになったのは関東大震災後。周辺には町工場が多く、家族総出で働く多忙な家庭では総菜店で買い求めるおかずで手軽に食事を済ませていました。自家製のぬか漬けに、野菜や豆の煮物、ボリュームたっぷりのコロッケなど、ショーケースには各店の名物が並んでいます。下町らしい買い物客とのやりとりを見ているだけで、心が温まりそうです。

▶ 童心に帰る小江戸の人気スポット 川越菓子屋横丁(埼玉県川越市)
小江戸と呼ばれる川越は、情緒溢れる蔵造りの町並みに、時を告げる鐘が鳴り響く人気の観光スポット。石畳みの道の両わきには10数軒を超える菓子店、駄菓子店が並んでいます。横丁の起源は明治期。江戸っ子好みの気取らない菓子を製造したのが始まりと言われています。素朴な団子やせんべい、ニッキやハッカのあめ玉、黒糖のふ菓子など、あれこれ品定めが楽しめそうです。
