古くから牛肉文化が根付く京都。その理由は?

京都の「」と聞いて、思い浮かべるものはなんでしょうか。繊細な技で仕立てられた京料理? 京野菜など旬の素材をいかしたおばんざい? ハレの日にふさわしい料理からしみじみ美味しい日常の味まで、悠久の歴史を誇る京の街では多様な文化の影響を受けながら豊かな食文化が育まれてきました。「牛肉文化」もその一つ。今回は、京都人と牛肉の関係を紐解いていきましょう。

明治時代に広がった日本の牛肉文化

まずは、日本と牛肉の歴史から。牛肉を食べる文化が入ってきたのは弥生時代だと言われています。しかし、675(天武4)年には仏教の教えに基づき「肉食禁止令」が発布され、牛のほか馬、犬、猿、鶏の肉を食することが禁ぜられました。

その後、大っぴらに口にすることができるようになったのは明治時代に入ってから。西洋文化の広がりとともに肉食も解禁され、牛肉を食べることが文明開化のシンボルに。すきやきのルーツとなる「牛鍋」が大流行し、多くの人を魅了しました。

そんな時代の流れとともに、京都にも牛肉料理を専門に提供する店が誕生。そうして牛肉を食べる文化が少しずつ広まり、やがて一般家庭の献立にも取り入れられるようになっていきました。

なぜ、京都人は牛肉が好き?

関東でお肉と言えば豚肉ですが、関西では牛肉が主流。肉じゃがもカレーもコロッケも、牛肉でつくるのが一般的です。とくに京都市は、一世帯あたりの牛肉消費額が全国トップクラス。それほどまでに牛肉文化が根付いている理由はどこにあるのでしょうか?

「新しもの好き」な気質

ひとつは、京都人の「新しもの好き」な気質。伝統と歴史を重んじながら、新しいものを積極的に受け入れる姿勢が、京都の豊かな文化を育んできました。
それは食文化においても同じ。進取の気性に富んだ京都には、明治時代の幕開けとともに牛肉を扱う店々が誕生。1869(明治2)年には京都初の牛肉屋「盛牛舎森田屋(現・モリタ屋)」、1873(明治6)年にはすきやきを名物とする「三嶋亭」が開業しています。そうした店にハイカラ好みの旦那衆や文化人たちがこぞって通ったことも、京都の牛肉文化がどんどん磨かれ、大きく花開く一因となったといわれています。

上質な和牛が集まりやすい立地

上質な牛肉が手に入りやすいという地理的要因も挙げられます。日本三大和牛として知られる「松坂牛(三重)」、「神戸ビーフ(兵庫)」、「近江牛(滋賀)」。京都はこの3つの産地の中心に位置しているため、古くから良質な和牛が手に入りやすい環境にありました。そうした地の利も、牛肉文化の醸成に大きく寄与したと考えられています。

そのほかにも諸説ありますが、京都人気質と立地、この2つによるところが大きいのではないかと推察されます。

京都のブランド和牛「京都肉」

あまり知られていませんが、実は京都も良質な和牛の生産地。1310(延慶3)年に描かれた国内最古の和牛書「国牛十図」に「丹波牛」が取り上げられていることからも、その歴史の長さが窺えます。脈々と受け継がれてきた生産ノウハウや技術を活かして、丹精込めて飼育される京都の和牛。なかでも4つの条件(※)を満たす食肉は「京都肉」としてブランド化。三大和牛に勝るとも劣らない肉質の良さ、繊細な味わいと上品な舌ざわりが堪能できる逸品です。

※黒毛和種であること、京都府内で最も長く飼養されていること、京都市中央食肉市場において食肉加工されること、枝肉格付が最高ランクの〈A-5、B-5及びA-4、B-4規格〉であること

いかがでしたか? 京都の街には、牛肉にうるさい京都人をも唸らせる名店がたくさんあります。すきやきから焼肉、肉割烹まで、そのスタイルはさまざま。今度京都を訪れるときにはそんなお店にも足を運んで、土地に根付いた牛肉文化を味わってみてくださいね。