中高年から増えてくる肩の痛み。腕を動かすと痛みが走り、洋服の脱ぎ着や洗髪など、日常生活に支障が起こることも。大半は「五十肩」で、自然と治るものですが、ほかに原因のある場合も。しっかりケアして、早く治しましょう。
複雑な肩のしくみ
肩関節は上腕骨(じょうわんこつ)、肩甲骨(けんこうこつ)、鎖骨(さこつ)の3つの骨で支えられ、骨だけでは構造的に不安定なところを関節包や滑液包(かつ
えきほう・動きをスムーズにする液の袋)、腱板(けんばん・小さな筋肉と腱の集まり)、筋肉などが組み合わさって強度を高めています。
ところが年齢とともに、肩を構成するどの部分も強度が少しずつ低下していきます。また、肩を酷使している人は年齢とともに炎症や損傷を起こしやすくなり、反対に肩をあまり動かさない生活をしている人も、肩関節の柔軟性が失われ、血行が悪くなって、傷がつきやすくなってしまいます。その結果、肩の痛みを訴える人が多くなるわけです。

肩の痛みの代表・五十肩
肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)
肩の痛みの代表といえるのが五十肩です。五十肩が起こる原因はよくわかっていませんが、関節包や滑液包に炎症が起こることで痛みが生じると考えられています。あるとき急に起こり、痛みのために、腕を後ろ側に回せなくなり、背中のファスナーが自分では上げられなくなったり、袖に手が通せなくなったり…。頭に手が届かなくなるため、洗髪に苦労することもあります。痛みは夜間寝ているときに強くなる傾向があります。50代の人に多いためこのように呼ばれていますが、実際には30〜70歳代までの広い世代で発症します。発症頻度に男女差はなく、通常は片側だけに起こり、同じ側が再発することはほとんどないため、痛みを繰り返す場合は、他の疾患との判別が必要となります。
女性に多い
・石灰沈着性肩関節周囲炎(せっかいちんちゃくせいかたかんせつしゅういえん)
肩関節の周辺、とくに腱板などに石灰(カルシウム)成分が沈着することで炎症が起こり、非常に強い痛みが生じます。夜間に突然生じる激烈な肩関節の痛みで始まることが多く、痛みで睡眠が妨げられ、関節を動かすこともできなくなります。40〜50歳代に発症しやすく、圧倒的に女性に多い病気です。
利き腕の肩に起こりやすい
肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)
腱板がすり切れて「穴」のようなものが開いて炎症が起こり、痛みが生じます。重い荷物を持つ仕事で肩を酷使している人や、転倒などで外傷がある人に起こりやすく、利き腕の肩に多く発症します。発症年齢のピークは60歳代で、80歳代では約3割の人に見られます。
自己判断は危険!
「五十肩」「石灰沈着性肩関節周囲炎」「肩腱板断裂」には「突然痛みが起こる」「腕の外側が痛む」「腕を動かすと痛む」「夜間に痛みが強くなる」など、症状が共通しており区別がつきづらいものです。また、肩の痛みには、頸椎(けいつい)の障がいによるもの、狭心症、心筋梗塞の前兆という例もあります。いずれも、治療の時期が遅れると、治りにくくなり、重大な発作にもつながりかねません。肩が痛んだら「五十肩だろう」と自己判断せずに、医療機関を受診したり、専門家に相談したりするようにしましょう。
