ある日突然身体が震えることがあるかも知れません。
寒気がして、ぶるっと震えるのではなく、小刻みな震えは病気のサイン。
首や手が震える症状は「本態性振戦」かもしれません。
「本態性振戦」はパーキンソン病と間違えられやすいですが、加齢とともに現れやすい症状です。
本日は本態性振戦についてご紹介します。
突然手が震える…その原因とは?アルコールは関係ある?ストレスが原因?動悸、頭痛、発汗、発熱によるものでない場合は

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高齢化社会を突き進む日本。
今までよりも多くの高齢者が増えることで、知られていなかった病気もよく知られるようになりました。
年齢を重ねると人間は細かな動きが不得意になります。
年齢を重ねると出やすいのは手の震え。
特に手先の震えは老化とともに発現しやすい現象で、医学的には「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」と呼ばれています。
本態性振戦は震え以外に症状が見られず原因がわかっていない病気のこと。
65歳以上の人の約14パーセントの人が発症していることがわかっており、多くの高齢者に見られる症状です。
震えは意識でコントロールできていない異常動作。
そのため、細かな作業をするときには支障を来します。
これからは70歳、80歳まで働く社会が近づいているため、高齢者の労働に大きな障害となるのです。
手の震えの原因はアルコール?
アルコール依存症患者のなかには、アルコールを摂取していないと手が震える人がいます。
このことは知っている、という方も多いのでは内でしょうか?
アルコール依存症はお酒の飲み方を、自らコントロールできなくなった状態のこと。
誰にでもかかる可能性のある依存症です。
アルコール依存症は以下の基準を2つ以上満たし、かつ12ヶ月以内に起きていると認定される場合が多いようです。
・意図したより大量、または長期間に使用
・使用を減らしたり制限しようとするが成功しない
・アルコールを得るため、使用するため、そこから回復するために多くの時間を費やす
・渇望
・反復的な使用により、職場・学校・家庭で責任を果たせない
・社会的、対人的な問題が起き、悪化しているにもかかわらず使用を続ける
・私用のために社会的、職業的、娯楽的活動を放棄したり縮小している
・身体的に危険な状況でも使用を反復
・身体的、精神的問題が悪化していると感じていても使用を続ける
・耐性
・離脱症状
なかにはこうした症状を抱えているという方も多いのではないでしょうか?
アルコール依存症にかかると「お酒を飲むのはいけないこと」とわかっていても、1杯だけなら、今日だけだから、といった具合にアルコール摂取の欲望を抑えられなくなります。
この状態は本人の意思とは無関係で、脳がアルコールを欲しているため起こると考えられています。
そのため、アルコール依存症を一度発症するとアルコールを断つことが難しく、一度症状が落ち着いても再発しやすいのが特徴です。
初期段階ではお酒を飲んでいない時間はイライラしてしまったり、妙に落ち着かない、といった症状が出るよう。
さらに症状が進行すると「離脱症状」が現れ始めます。
離脱症状とはアルコールが体内から抜けたときに起こる症状で、禁断症状とも呼ばれています。
この離脱症状は
・手が震えてくる
・お酒がないと眠れない
・寝汗
・吐き気
・幻覚
などが代表的。
本態性振戦は原因不明の震えですが、アルコール依存症患者の場合、アルコールが体内からなくなったため手が震えるのです。
日常的に多くのお酒を飲まれる方は、アルコールの離脱症状を疑ってみても良いかも知れません。
一般的な病気でも「震え」が起こることも
本態性振戦は原因不明の震えですが、日常生活のなかで震えが起こる場面は多数あります。
たとえば緊張したとき、寒いときなど。
こうした震えは原因がわかっているので、本態性振戦ではありません。
原因を取り除いてあげると症状はよくなりますよね。
本態性振戦は病気を起因としないので、原因不明の震えが起こった場合、疑ってみても良いかも知れませんね。
パーキンソン病と本態性振戦(ほんたいせいしんせん)の違いは?

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そんな本態性振戦と間違われやすいのがパーキンソン病です。
一昔前はパーキンソン氏病と呼ばれていましたが、現在は氏が取れて、パーキンソン病と呼びます。
手の震えの症状が出たため、病院を受診したところ難病のパーキンソン病と診断。
しかし、治療を続けているうちに「本態性振戦」ということがわかった、というケースもあるそう。
パーキンソン病と本態性振戦の違いはどこにあるのでしょうか?
実際、かなり間違われやすいようです。
正しく診断され、そして治療を行わなければ症状は一向に改善しません。
本態性振戦は原因不明、ということはここまでお伝えしてきたとおり。
パーキンソン病は病名がしっかりとついているとおり、原因があります。
本態性振戦にもっとも多い症状は「両手を伸ばしたときに手が細かく震える」「首が小刻みに震える」「声が震える」という3つの症状。
対してパーキンソン病は中脳の黒質にある神経細胞の変性によって起こる病気。
進行すると振戦、固縮、動作緩慢、姿勢保持障害という4つの症状が揃うのですが、このなかの「振戦」が本態性振戦と間違われるポイントなのです。
パーキンソン病の診断を確定させるためには6つの大きなポイントがあります。
ひとつめが左右差。
パーキンソン病の震えは身体の左右に差があります。
しかし、本態性振戦は左右対称に震えるのです。
ふたつめはパーキンソン病は箸を持っても震えることなく食事可能。
しかし本態性振戦は箸を持つ手も震え、食事が困難です。
三つ目は安静時。
パーキンソン病は安静時に手が震えます。
しかし、本態性振戦は「動作時」に手が震えます。
四つ目は首の震え。
パーキンソン病に首の震えはありませんが、本態性振戦には首の震えが出やすいです。
五つ目は歩行障害・動作緩慢。
パーキンソン病にはこれらの症状が発現しますが、本態性振戦にはこれらの症状は現れません。
六つ目は家族歴。
パーキンソン病に家族歴(両親、兄弟、姉妹、子ども、その他の家族の現在および過去の疾患)があり、本態性振戦にはありません。
本態性振戦は症状が軽い場合、治療の必要はありません。
しかし重篤な症状が現れ始めたらすぐに治療を行う必要があります。
ここまででご紹介してきた症状が発現した場合はすぐに病院に行きましょう。
体が震え出して眠れない…。身体の震えはどの科で診察を受けるの?

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では震えが起こり始めたら病院の何科に罹れば良いのでしょうか?
手足が震える、身体の動きがぎこちない、歩きにくくなって転びやすくなったといった症状が現れるパーキンソン病が疑われる場合は「神経内科」へ。
パーキンソン病は震えが初期症状として多いですが、動作のぎこちなさ(緩慢)だったり歩行障害から発症する場合もあります。
いずれにしても、違和感を感じた場合は神経内科を受診すると良いでしょう。
両手を伸ばすと震えが出現し、緊張するとより震えが強くなったり、アルコールを摂取したら震えが目立たなくなる「本態性振戦」が疑われる場合も「神経内科」へ。
必ずしも高齢者に出現するわけでは亡く、10代から70代まで幅広い人が発症する可能性があるので、大きく震えだし、自分の意思でコントロールできない場合は「神経内科」を受診しましょう。
震えは軽度なら放置していても気になりません。
しかし、悪化すると日常生活がままならなくなるほどの震えに発展することも。
不安な場合は「神経内科」を受診しましょう。